ツノサケビドリは不思議な鳥?
— 南米が誇る叫ぶカモの異名を持つ戦う鳥 —
ツノサケビドリ(Horned Screamer)。
その名前を聞くだけで何か騒がしい感じがするが、実際この鳥、見た目も声も規格外だ。
南米の湿地や草原に暮らし、体長は80〜90cmほど。
遠くから見ると白と黒の羽が美しい大型の水鳥に見えるが、近づくと異様な存在感を放っている。
ツノがあるのにツノで戦わない
頭には一本のツノのようなものが突き出ている。
だがこれは骨ではなく、クチバシの延長部分が伸びた角質の突起。
内部は空洞で、触ると柔らかい。戦うための武器ではなく、飾りのような存在だ。
しかも、ぶつけて折れることもあるが、時間がたつとまた生える。
つまりこのツノは見せるためのツノで、使うためのツノではないのだ。
本当の武器は翼のトゲ
実際にツノサケビドリが戦うとき、使うのは頭ではなく翼。
関節部分に鋭い角質のスパイクが生えており、これで相手を突く。
縄張り争いやペア争いでは、このトゲで打ち合うように戦うことがある。
見た目の優雅さとは裏腹に、翼を広げるとまるで武装しているかのよう。
その姿はまさに空飛ぶナイト(騎士)だ。
鳴き声は南米最強クラス
ツノサケビドリの英名 Screamer(叫ぶ鳥)は伊達じゃない。
その鳴き声は100メートル先でもはっきり聞こえるほど大音量で、
ホーンという金属的な響きが湿地全体にこだまする。
ペアで声を重ねて鳴くこともあり、その音量はもはや鳥界のジャイアン級。
朝から晩まで鳴き続けるため、地元では少々うるさがられる存在でもある。
南米の奇鳥、その生きざま
見た目はカモに似ているが、ツノサケビドリはカモ目の中でも独立したサケビドリ科に属する。
古い進化系統を保つ珍しい鳥で、現生するのはこのツノサケビドリと近縁の2種だけ。
湿地で草を食べ、空を飛び、そして翼で戦う。
ツノは飾り、声は武器。
派手に見えて、実は地道に生きるサバイバーだ。




