タスマニアデビルは本当に悪魔?知られざる不思議な生態
タスマニアデビルと聞いて、みなさんはどんなイメージを持つでしょうか。
黒くて怖い顔、怒鳴るような声、ちょっと恐ろしい名前。どこか悪魔じみた印象を持っている人も多いかもしれません。
でも実際のタスマニアデビルは、ただの怖い動物ではありません。
驚くほどユニークで、むしろ生態系を守る大切な存在なのです。
この記事では、悪魔と呼ばれた理由から絶滅の危機、意外な素顔まで、タスマニアデビルの真実に迫ります。
悪魔の名前は鳴き声から生まれた?
タスマニアデビル(Sarcophilus harrisii)は、オーストラリア南東の島・タスマニアだけに生息する動物です。
夜になると活動を始め、森の中でギャーッ、グワァッと、まるで誰かが叫んでいるような鳴き声を上げます。
入植したヨーロッパ人たちは、その不気味な声を聞いて震え上がり、こう言いました。
森に悪魔がいる!
こうしてデビル(悪魔)という名前がついたのです。
つまり悪魔は見た目や性格ではなく、鳴き声の印象から生まれた誤解だったのですね。
見た目は小さなクマ、でもカンガルーの仲間!
名前や鳴き声のイメージとは裏腹に、タスマニアデビルは有袋類(ゆうたいるい)というグループに属しています。
カンガルーやコアラと同じく、お腹の袋で赤ちゃんを育てる動物なのです。
体長はおよそ60センチ、体重は6〜8キロほど。見た目は小型のクマのようですが、れっきとしたカンガルーの親戚です。
そして彼らは、森の清掃員として重要な役割を担っています。
タスマニアデビルは死んだ動物の肉を食べるスカベンジャー(腐肉食動物)。
食べ残しをきれいに片づけてくれるおかげで、病原菌のまん延を防いでいるのです。
絶滅の危機をもたらした感染するがん
そんなタスマニアデビルが今、深刻な危機にあります。
その原因は、1990年代に発見された悪魔の顔面腫瘍性疾患(DFTD)という病気です。
この病気は、世界でも珍しい感染するがん。
ケンカや食べ物の奪い合いの際、口をかんだりかまれたりすることでがん細胞そのものが他の個体に移ってしまいます。
顔や口の周りに大きな腫瘍ができ、食事が取れなくなって衰弱死することも多く、島全体の個体数は20年ほどで7割以上も減少しました。
現在は国を挙げて保護活動が進められ、感染していない個体を島外で繁殖させるプロジェクトも行われています。
夜の森の掃除屋であり希望の象徴
一見恐ろしい名前とは裏腹に、タスマニアデビルは生態系を守るヒーロー。
腐肉を食べて森を清潔に保ち、他の動物たちの健康を支えています。
そして今では、病気と戦いながら生き抜く姿が希望の象徴としてタスマニアの人々に愛されているのです。
夜の森で響くあの叫び声も、かつては恐怖の象徴でしたが、いまは生きている証として耳を澄ませる人も増えています。
まとめ:悪魔じゃない、自然の守護者だった
・鳴き声の怖さが名前の由来
・カンガルーやコアラと同じ有袋類
・感染するがん(DFTD)で個体数が激減
・森をきれいに保つ清掃員のような存在




