ハシビロコウ

ハシビロコウは不思議な鳥?

ハシビロコウと聞いて、みなさんはどんなイメージを持つでしょうか。
動かない鳥、怒ると怖い鳥、あるいは笑っているような顔が印象的な鳥かもしれません。
その存在感と無言の迫力から、動物園でも圧倒的な人気を誇ります。

しかし、その一方で「本当に動かないの?」「飛べるの?」といったような話も多いのがハシビロコウです。
この記事では、そんなハシビロコウの知られざるリアルな姿を紹介します。

海外でも人気の動かない鳥 その静けさの理由

ハシビロコウ(Shoebill)は、アフリカ東部の湿地に生息する大型の鳥です。
全長は約120センチ、翼を広げると2.5メートルにもなります。
その名の通り靴のようなくちばしが特徴で、見た目のインパクトは抜群です。

彼らがほとんど動かないのは、怠けているからではありません。
魚を捕らえるため、長時間じっと立ち、わずかな動きも抑えて獲物を待つ「待ち伏せ型ハンター」なのです。
水面の揺らぎや音で魚に気づかれないように、動かないことこそ最高の狩りの戦略。
動物園でまるで置き物のように立っている姿も、野生の習性をそのまま映したものです。

飛ぶこともできる静寂の巨鳥

その堂々とした体つきから「飛べない鳥」と思われがちですが、ハシビロコウはしっかり飛べます。
野生では湿地の上をゆったりと滑空し、時には時速50キロ近いスピードで移動します。
飛ぶ姿はサギやコウノトリに似ていて、静かに大きな翼を広げながら空を進む姿はまさに威厳そのものです。

狩りの瞬間だけは俊敏に動く

普段は動かないハシビロコウですが、獲物を狙うときだけは別。
魚が水面に現れたその一瞬、くちばしを振り下ろして仕留めます。
その動きは一瞬で、目にも止まらぬ速さ。
人の目には突っ込んでいるように見えるほど素早く、静と動のギャップが際立ちます。

静けさの中に爆発的な瞬発力を秘めた、まさに「動かない稲妻」と呼ぶにふさわしい鳥です。

笑っている顔は本当に笑顔?

ハシビロコウの顔が笑っているように見えるのは、口角の形とくちばしの角度によるものです。
実際には、鳥類には人間のような表情筋がないため、笑顔や怒り顔という感情表現はしません。
しかし、口を開けて「カタカタ」と音を鳴らすクラッタリングという行動は、威嚇や縄張りアピールのサイン。
つまり、見た目は笑顔でも、内心は警戒中ということもあります。

動かないからこそ生き残る 静寂のハンター

ハシビロコウは、速さよりも静けさで勝負する鳥です。
その堂々とした姿勢と冷静な観察眼は、まるで哲学者のようでもあります。
飛べば時速50キロ近く、止まればまるで石像のよう。
極端に見えるそのギャップが、彼らの最大の魅力です。

もし動物園でハシビロコウを見かけたら、
「動かないな」と通り過ぎずに、じっと観察してみてください。
その静けさの中に、野生の知恵と進化の物語が息づいています。

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