コアラは不思議な生き物?かわいいじゃない知られざる一面
コアラと聞いて、みなさんはどんなイメージを持つでしょうか。
木の上で眠る愛らしい姿、ユーカリの葉を食べるのんびり屋、オーストラリアの象徴的な動物。けれど、その裏には「そんな生き方ありなの?」と驚くようなリアルな生態が隠れています。
このコラムでは、脳の秘密からユーカリとの奇妙な関係、赤ちゃんの離乳食の真相まで、コアラの意外な事実を探っていきます。
つるっとした脳と食べ物を認識できない誤解
コアラの脳は体のわりにとても小さく、表面のしわも少ない平滑脳(へいかつのう)。この特徴から「頭が悪くてユーカリの葉を認識できない」と言われることもありますが、それは誤解です。
コアラは嗅覚が鋭く、葉の匂いで毒の強さや鮮度を見分けています。
木に生えたユーカリしか食べないのは、脳のせいではなく“習性”の問題。
木の上が安全だと知る彼らは、地上の葉を「食べ物」として認識しないのです。
ユーカリの毒を処理するための省エネ生活
コアラの主食であるユーカリの葉には、フェノール類やテルペン類といった有毒成分が含まれています。多くの動物なら中毒を起こしますが、コアラは肝臓の「シトクロムP450」という酵素を使ってこれを分解します。
ただし、ユーカリの葉は栄養もカロリーも少なく、消化にもエネルギーがかかる。
そのためコアラは1日の18〜22時間を眠って過ごし、代謝を落として毒の処理に体力を回しています。
「毒で眠い」のではなく、「エネルギーを節約しながら毒を分解するために眠る」。コアラの生活は、徹底した省エネ戦略なのです。
赤ちゃんの主食はパップという母の贈り物
コアラの赤ちゃん(ジョーイ)は、生まれたばかりではユーカリの毒を処理できません。
そこで母親が出すのが“パップ(pap)”と呼ばれる特別な便。赤ちゃんはこれを食べることで、腸内にユーカリの毒を分解できる細菌を取り込みます。
見た目はちょっと驚きますが、これは母親から子への“生きる力”の継承。自然界の仕組みとしてはとても合理的なのです。
のんびり見えて、実はしたたかな生存者
木の上で暮らし、毒のある葉を食べ、ほとんどの時間を眠って過ごす。
その姿は怠け者のように見えて、実は厳しい環境に適応した結果です。
無駄を極限まで省き、リスクを避け、エネルギーを上手に使いながら生きる――コアラはかわいさの裏に“進化のしたたかさ”を秘めた生き物。
木の上のゆったりとした寝姿は、自然界の知恵そのものなのかもしれません。




