ラッコ

ラッコは不思議な生き物?海に生きるグルメ探究者

ラッコと聞いて、あなたはどんなイメージを持つでしょうか。
かわいく貝を割る姿、水族館の人気者、手をつないで浮かぶ“癒やし系”の代表格。
しかしその一方で、「実はラッコってそんなに食べるの?」「毛皮の秘密がすごい!」と驚くようなリアルな生態があるのをご存じでしょうか?

このコラムでは、ラッコの名前の由来から代謝の異常な高さ、そして“海のグルメ”と呼ばれる理由まで、ラッコにまつわる意外な真実をご紹介します。

名前はアイヌ語にルーツあり!

「ラッコ」という言葉はロシア語から来たと思われがちですが、実は**アイヌ語の「rakko(ラㇰコ)」**が由来です。
意味は「海の獣」。北海道沿岸に暮らすこの動物を、アイヌの人々がそう呼んでいたのです。

とはいえ、ラッコの生息地は日本だけではありません。
かつては北海道からロシアのカムチャツカ半島、アリューシャン列島、アラスカまで広く分布していました。
そのためロシア語でも「カラーン(калáн)」という名前があり、極東ロシアでも馴染みの生き物です。
つまり、名前はアイヌ語、暮らしは日本とロシアをまたぐ“北の海の住人”なのです。

1日に体重の3割を食べる!?驚異の代謝システム

ラッコは哺乳類の中でもとくに代謝が高い生き物です。
脂肪で体温を保つ代わりに、超高密度の毛皮(1平方センチに10万本以上!)で冷たい海から身を守っています。
その分、常にエネルギーを燃やさなければならず、体重の20〜30%もの食べ物を毎日摂取しなければなりません。

しかもその食事内容が豪華。
ウニ、アワビ、カニ、貝類など、人間から見れば高級食材ばかり。
水族館ではラッコ1頭に月10万円以上の餌代がかかることもあるそうです。
“海のグルメ王”とはまさにラッコのこと。

天然の研究者?石を使うラッコの知恵

ラッコは道具を使う動物としても知られています。
胸の上に貝を置いて石でコンコンと割る姿はおなじみですが、じつはお気に入りの石を“ポケット”にしまって持ち歩く個体もいるんです。
腹部の皮のたるみを上手に使って、まるで研究者が道具を持ち歩くように工夫しているのです。
知能が高く、好奇心旺盛な“海の探究者”と言っていいでしょう。

水に浮かぶ理由は毛と空気

ラッコがぷかぷか浮かんでいられるのは、単に体脂肪のせいではありません。
毛の間に閉じ込めた空気の層が浮力を生み出しているのです。
そのため、ラッコは1日に何度も毛づくろいをして毛の中の空気を保ちます。
毛づくろいを怠ると冷えと疲労で命を落とすこともあるほど、丁寧な“セルフメンテナンス”が欠かせません。

身近で奥深いラッコの世界

かわいらしい見た目の裏に、科学的にも驚くべき仕組みを秘めたラッコ。
名前はアイヌ語、暮らしは日露の海、体は常に高燃費。
そして石を使って貝を割る、知性派の“グルメ獣”。

彼らはまるで、自然の中で実験と観察を繰り返す探究者のよう。
次に水族館でラッコを見るときは、その小さな手の動きの中に、“生きる知恵”が詰まっていることを思い出してみてください。

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